ケミカルピーリング
エステティックサロンにおけるケミカルピーリングの消費者危害防止策について(平成13年3月)
はじめに
最近、AHAを使用した「ケミカルピーリング」という施術が、エステティックサロンで行われるようになり、ニキビやニキビあと、シミやシワが取れると宣伝されていることもあり、急速に広まってきました。しかし、これらの施術を受け、皮膚トラブルを起こしたという事例が1998年以降急増してきていることを、2000年2月に国民生活センターが指摘し、その適正化を、行政、業界に対して要望しました。
こうした状況を鑑み、厚生省は、財団法人 日本エステティック研究財団に対し、エステティックサロンにおけるケミカルピーリングの実態把握及びその安全性の確保についての研究を要請しました。
これを受け、研究財団では、研究委員会にケミカルピーリング小委員会を設け、エステティックサロンで行われているいわゆるケミカルピーリングの施術について、消費者への危害を未然に防止するという観点から、AHAピーリング剤や施術方法、禁忌事項やアフターフォローについて調査、研究を重ね、それらをこのほど報告書として以下にまとめました。
最近、AHAを使用した「ケミカルピーリング」という施術が、エステティックサロンで行われるようになり、ニキビやニキビあと、シミやシワが取れると宣伝されていることもあり、急速に広まってきました。しかし、これらの施術を受け、皮膚トラブルを起こしたという事例が1998年以降急増してきていることを、2000年2月に国民生活センターが指摘し、その適正化を、行政、業界に対して要望しました。
こうした状況を鑑み、厚生省は、財団法人 日本エステティック研究財団に対し、エステティックサロンにおけるケミカルピーリングの実態把握及びその安全性の確保についての研究を要請しました。
これを受け、研究財団では、研究委員会にケミカルピーリング小委員会を設け、エステティックサロンで行われているいわゆるケミカルピーリングの施術について、消費者への危害を未然に防止するという観点から、AHAピーリング剤や施術方法、禁忌事項やアフターフォローについて調査、研究を重ね、それらをこのほど報告書として以下にまとめました。
国民生活センターの要望事項(原文のまま)
【研究財団への要望】
【研究財団への要望】
- ①「ピーリング」は「美顔エステ」の中でも非常に危害件数の割合が高い。施術内容検討を行うなど安全性を確保すること。
- ②事前に、消費者に対し施術内容や費用、施術責任者などの説明をすること。
- ③契約する前に、消費者に対し、施術内容(施術期間、施術回数、使用溶液、効果の程度や有害作用、費用等)の他、有害作用があった場合の治療費用の負担、解約等に関して説明を行い、書面で確認の上、契約すること。
- ④消費者から異常の申し出があれば、施術の中止や解約などに応じるなど適切な処置の検討を要望する。
【行政への要望】
- ①危害防止対策として、業界が「ピーリング」施術で使用している溶液の実態調査と施術内容の安全性の確認などの検討を要望する。
(2)欧米諸国におけるケミカルピーリングの歴史と日本の現状
ケミカルピーリングとは、皮膚に化学物質を塗布することで、表皮または真皮を剥離させ、皮膚の再生する自然治癒過程を利用した剥皮術の一方法です。
医学的にケミカルピーリングが用いられるようになったのは1892年。ドイツの皮膚科医Unnaによってはじめて確立され、当時はサリチル酸、レソルシン、フェノール、トリクロール酢酸(=TCA)を用いて行っていました。
現在、国内で行われているピーリング剤の主流はグリコール酸などのAHA(アルファハイドロキシ酸 alpha hydroxy acids)です。AHAを用いたピーリングは、1984年に Van Scottらがその研究を報告し、1990年代に入ってから認知され、これをきっかけに米国で第二次ブームが起こりました。その後、有色人種に対しても副作用が少ない方法であることがわかってからは1994年にAHAピーリング剤の輸入許可が厚生省から下り、以降は日本においても大ブームとなり、臨床医の間でも容易に治療に取り入れられるようになりました。しかし、副作用を全く起こさないわけではなく、医療機関の中でもトラブルになっているケースもあります。まして、ブームだからといってエステティックサロンで安易に行われていること自体に大きな問題があります。
ケミカルピーリングは本来、医療で活用されてきていることを再認識した上で、エステティックサロンで行えるケミカルピーリングの目的を明確に定め、その上で適したピーリング剤を用いることが大切です。また、施術前の皮膚の観察等を十分に行い、お客様の施術目的を明確にし、適した方法で行うことが重要です。
医学的にケミカルピーリングが用いられるようになったのは1892年。ドイツの皮膚科医Unnaによってはじめて確立され、当時はサリチル酸、レソルシン、フェノール、トリクロール酢酸(=TCA)を用いて行っていました。
現在、国内で行われているピーリング剤の主流はグリコール酸などのAHA(アルファハイドロキシ酸 alpha hydroxy acids)です。AHAを用いたピーリングは、1984年に Van Scottらがその研究を報告し、1990年代に入ってから認知され、これをきっかけに米国で第二次ブームが起こりました。その後、有色人種に対しても副作用が少ない方法であることがわかってからは1994年にAHAピーリング剤の輸入許可が厚生省から下り、以降は日本においても大ブームとなり、臨床医の間でも容易に治療に取り入れられるようになりました。しかし、副作用を全く起こさないわけではなく、医療機関の中でもトラブルになっているケースもあります。まして、ブームだからといってエステティックサロンで安易に行われていること自体に大きな問題があります。
ケミカルピーリングは本来、医療で活用されてきていることを再認識した上で、エステティックサロンで行えるケミカルピーリングの目的を明確に定め、その上で適したピーリング剤を用いることが大切です。また、施術前の皮膚の観察等を十分に行い、お客様の施術目的を明確にし、適した方法で行うことが重要です。
(3)ケミカルピーリング剤について
1)AHA(アルファハイドロキシ酸:通称フルーツ酸)
AHAとは、サトウキビやタマネギなどから抽出されるグリコール酸、サワーミルクやヨーグルトから抽出される乳酸、青リンゴから抽出されるリンゴ酸、ブドウや古いワインから抽出される酒石酸、オレンジやレモンなどの柑橘類から抽出されるクエン酸などのことです。これらはいずれも有機酸であり、皮膚に対して類似の効果を持ちます。なかでもグリコール酸は、他のピーリング剤が角質表層から溶解していくのとは異なり、角化細胞間の接着を弱め表皮を剥離しターンオーバーを速める作用があるため、ピーリング剤に適しているといわれています。
AHAは、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を活発にして角質の剥離を促し、皮下組織への水分保持をもたらし、細胞間のイオンの結合を妨げることによって、角質細胞の結合を緩め、皮膚各層の落屑を促進させる作用があります。また、コラーゲン、エラスチンなどの真皮成分の産生を促進させて真皮を肥厚させ、メラノサイトのメラニン産生能を抑制する効果があるといわれています。皮脂腺に対しては皮脂を除去し、開大した毛穴にも浸透して毛穴を収縮させる効果もあります。
AHAとは、サトウキビやタマネギなどから抽出されるグリコール酸、サワーミルクやヨーグルトから抽出される乳酸、青リンゴから抽出されるリンゴ酸、ブドウや古いワインから抽出される酒石酸、オレンジやレモンなどの柑橘類から抽出されるクエン酸などのことです。これらはいずれも有機酸であり、皮膚に対して類似の効果を持ちます。なかでもグリコール酸は、他のピーリング剤が角質表層から溶解していくのとは異なり、角化細胞間の接着を弱め表皮を剥離しターンオーバーを速める作用があるため、ピーリング剤に適しているといわれています。
AHAは、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を活発にして角質の剥離を促し、皮下組織への水分保持をもたらし、細胞間のイオンの結合を妨げることによって、角質細胞の結合を緩め、皮膚各層の落屑を促進させる作用があります。また、コラーゲン、エラスチンなどの真皮成分の産生を促進させて真皮を肥厚させ、メラノサイトのメラニン産生能を抑制する効果があるといわれています。皮脂腺に対しては皮脂を除去し、開大した毛穴にも浸透して毛穴を収縮させる効果もあります。
※グリコール酸と乳酸
AHAの中でも、ケミカルピーリング基剤の成分として頻繁に用いられているのがグリコール酸と 乳酸です。両方を比較すると、グリコール酸は分子量が小さいので皮膚の中まで入りやすく、乳酸は 分子量が比較的大きいので作用はマイルドで、皮膚の表層部に作用すると言われています。ですから、 同じ濃度・pHでも、グリコール酸と乳酸ではその作用に違いが生じます。
AHAの中でも、ケミカルピーリング基剤の成分として頻繁に用いられているのがグリコール酸と 乳酸です。両方を比較すると、グリコール酸は分子量が小さいので皮膚の中まで入りやすく、乳酸は 分子量が比較的大きいので作用はマイルドで、皮膚の表層部に作用すると言われています。ですから、 同じ濃度・pHでも、グリコール酸と乳酸ではその作用に違いが生じます。
2)AHA以外のピーリング剤
AHAによるピーリングの作用は、浅いのに対して、TCA(トリクロール酢酸)、フェノールなどによるピーリングは浸透度が深く、壊死作用なども強くなります。ですからAHA以外は、有色人種に対しては瘢痕や色素沈着などの合併症を起こす危険性が高いので、エステティックサロンで用いるピーリング剤としては適していません。
AHAによるピーリングの作用は、浅いのに対して、TCA(トリクロール酢酸)、フェノールなどによるピーリングは浸透度が深く、壊死作用なども強くなります。ですからAHA以外は、有色人種に対しては瘢痕や色素沈着などの合併症を起こす危険性が高いので、エステティックサロンで用いるピーリング剤としては適していません。
(4)ケミカルピーリングの目的
1)医療としてのケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、シワとりなど"若返り"の一つの方法として幅広く用いられ、さまざまな研究を経て進歩してきました。
現在では、ニキビ、ニキビ後の瘢痕、乾燥肌、シミ、ソバカス、小ジワ、色素沈着など、皮膚疾患の治療や改善目的で行われています。また、顔面のみならず、四肢や体幹に用いられることもあります。
2)エステティックサロンで行うケミカルピーリング
エステティックサロンでは、肌表面の状態を整える、化粧のりを良くする、肌に透明感を持たせる、肌をしっとりと整える等の目的でケミカルピーリング剤を用いますが、いずれにせよ安全性を確保しなければなりません。
ケミカルピーリングは、シワとりなど"若返り"の一つの方法として幅広く用いられ、さまざまな研究を経て進歩してきました。
現在では、ニキビ、ニキビ後の瘢痕、乾燥肌、シミ、ソバカス、小ジワ、色素沈着など、皮膚疾患の治療や改善目的で行われています。また、顔面のみならず、四肢や体幹に用いられることもあります。
エステティックサロンでは、肌表面の状態を整える、化粧のりを良くする、肌に透明感を持たせる、肌をしっとりと整える等の目的でケミカルピーリング剤を用いますが、いずれにせよ安全性を確保しなければなりません。
(5)使用するケミカルピーリング剤について
AHAピーリング剤の輸入許可が厚生省から認められたのが1994年ですから、日本におけるケミカルピーリングの歴史はまだ浅く、AHA濃度等に関する規制等は現在のところありません。しかし、高濃度(30%以上)低pH(2以下)では、リスクが激増します。また、先進国であるアメリカにおいては、消費者向け製品の自主規制値として、(あくまでも化粧品業界(CIR)の自主規制ではありますが)既に以下のように規定されています。
★AHA(アルファハイドロキシ酸)に属する酸(グリコール酸、乳酸、リンゴ酸)の溶液を皮膚に塗布する場合、米国のケミカルピーリング剤使用基準は、AHA濃度を化粧品の場合は【10.0%未満、pH3.5以上】、訓練された技術者(エステなど)は【30.0%未満、pH3.0以上】、医師は【30.0%以上、pH3.0以下】。
(米国化粧品業界団体、化粧品成分調査委員会CIR報告)
★TCA(トリクロール酢酸)ピーリング、フェノールピーリング等は医療のみで実施される。
万一ピーリング剤で炎症などを来たした場合、日本人の皮膚は白人に比べて、色素沈着が残りやすいといわれているので、米国のAHA基準をそのまま適用することは危険と考えられます。したがって、作用が緩和であり安全性が高いという観点からも、米国化粧品業界の自主規制値を準用したAHA濃度
【10.0%(w/w)以下、pH3.0以上】が妥当と考えます。
またピーリング剤導入に関しては、安全性を確保した上で最大限の効果を上げるためにも、十分な事前教育の徹底が望まれます。
(米国化粧品業界団体、化粧品成分調査委員会CIR報告)
万一ピーリング剤で炎症などを来たした場合、日本人の皮膚は白人に比べて、色素沈着が残りやすいといわれているので、米国のAHA基準をそのまま適用することは危険と考えられます。したがって、作用が緩和であり安全性が高いという観点からも、米国化粧品業界の自主規制値を準用したAHA濃度
【10.0%(w/w)以下、pH3.0以上】が妥当と考えます。
(6)ケミカルピーリング施術上の注意点
ケミカルピーリングの施術にあたっては、その手順や使用する化粧品等は一様ではありませんが、いずれにせよまず施術が可能であるか否かの判断をすることがきわめて重要です。安全性の高いピーリング剤を使用したとしても、そのピーリング剤に適さない肌に施術を行えば、それだけのリスクと危険性を伴うことになります。ですから、施術前の皮膚の観察等を十分に行い、施術目的を明確にし、的確な方法で行うことが重要です。
エステティックサロンでは、疾病の治療を目的とした行為は法律で禁止されています。さらに、以下の場合も施術を避け、場合によっては、医師の診察を受けて下さい。
【禁忌事項】
皮膚の感染症(単純ヘルペス、とびひ、へんぺいイボ等) 日光過敏 敏感肌
皮膚に損傷や炎症がある人(皮膚炎、日焼け直後、脱毛直後、剃毛直後等)
その他(結膜炎、妊婦等)
また、施術中や施術後に起こりうるさまざまな変化や注意事項については、事前の説明が必要ですから怠らないようにして下さい。さらに、施術中にお客様が異常を訴えたときは、速やかに中断し、適切な対応をとるようにしてください。
【施術中に起こりうる変化や感覚】
チリチリとした刺激、疼痛感、熱感、むずがゆさ
【施術後に起こりうる変化や感覚】
赤み、カサツキ、乾燥、吹き出物、熱感
さらにケミカルピーリング施術当日は、施術部分への刺激を避けるようにし、サンスクリーン剤や保湿剤で保護して下さい。
また、施術後、お客様の皮膚に水ぶくれ、ただれ、かさぶた、シミなどの異常が見られるときは、すみやかに医師の診察を受けて頂くようにして下さい。
エステティックサロンでは、疾病の治療を目的とした行為は法律で禁止されています。さらに、以下の場合も施術を避け、場合によっては、医師の診察を受けて下さい。
【禁忌事項】
皮膚の感染症(単純ヘルペス、とびひ、へんぺいイボ等) 日光過敏 敏感肌
皮膚に損傷や炎症がある人(皮膚炎、日焼け直後、脱毛直後、剃毛直後等)
その他(結膜炎、妊婦等)
また、施術中や施術後に起こりうるさまざまな変化や注意事項については、事前の説明が必要ですから怠らないようにして下さい。さらに、施術中にお客様が異常を訴えたときは、速やかに中断し、適切な対応をとるようにしてください。
【施術中に起こりうる変化や感覚】
チリチリとした刺激、疼痛感、熱感、むずがゆさ
【施術後に起こりうる変化や感覚】
赤み、カサツキ、乾燥、吹き出物、熱感
さらにケミカルピーリング施術当日は、施術部分への刺激を避けるようにし、サンスクリーン剤や保湿剤で保護して下さい。
また、施術後、お客様の皮膚に水ぶくれ、ただれ、かさぶた、シミなどの異常が見られるときは、すみやかに医師の診察を受けて頂くようにして下さい。