エステティックと医療の境界


― 安全で信頼されるエステティックサービスのために ―

はじめに
近年、美容に対する国民の関心の高まりとともに、美容医療やエステティックを取り巻く環境は大きく変化しています。美容機器や化粧品の技術革新、美容医療サービスの普及、SNS等による美容情報の拡散により、顧客は多様な美容サービスを選択できるようになりました。その一方で、施術内容や広告表現の高度化・多様化に伴い、エステティックと医療との境界が分かりにくくなり、適正な業務範囲について理解を深めることが、これまで以上に重要となっています。施術を提供する側には、適正な業務範囲についての理解が求められ、施術に際し顧客の心身状態の把握をしたうえでの施術が安全で信頼に値するエステティック施術であることが要求されます。エステティックは健康な人を対象として、皮膚機能の維持・向上、さらには老化対策、心身のリラクゼーション及び生活の質向上を目的として提供されるサービスです。一方、医療は、疾病の診断、治療及び健康の回復を目的とする専門分野です。両者は、人々の生活を支える重要な役割を担っていますが、その目的と専門領域は異なります。
両者の役割を正しく理解し、適切な境界を守ることは、エステティック業界の発展を妨げるものではありません。むしろ、エステティックが持つ独自の価値を明確にすることは、高齢化社会、疾患社会において各自の生活の質向上に有益な分野であることは周知されるべきです。エステティックと医療の境界を見極めていくことはエステティック施術が社会からより一層信頼される専門分野として発展していくための基盤となるものです。
高性能な美容機器の普及や美容医療との関連性が注目される中で、施術内容の説明によっては、顧客が医療と同等の効果を期待して過剰施術により思わぬ事故に繋がってしまった事例が報告されています。このような状況において、エステティックに携わる者が医療との境界を正しく理解し、顧客に対し適切な施術を見極め自らの専門領域を守りながら安全な施術サービスを提供することは、顧客の安全確保と業界の信頼向上のために不可欠です。本財団では、創設以来、エステティックサービスの安全性向上、衛生管理の推進、人材育成及び消費者保護に関する取組みを進めてまいりました。本冊子では、エステティックと医療の違い、適正な業務範囲、安全管理、広告・説明における留意点、現場で判断に迷いやすい事例などについて整理しています。本冊子が、エステティシャン、サロン経営者、教育関係者をはじめ、エステティックに関わるすべての皆様の学習資料として活用され、消費者から信頼されるエステティックの発展に寄与することを願っております。エステティックの社会的価値をさらに高め、安心・安全なサービス提供につなげるための一助となれば幸いです。

2026年11月
公益財団法人日本エステティック研究財団
理事長 関東裕美