(4)ケミカルピーリングの目的
1)医療としてのケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、シワとりなど"若返り"の一つの方法として幅広く用いられ、さまざまな研究を経て進歩してきました。
現在では、ニキビ、ニキビ後の瘢痕、乾燥肌、シミ、ソバカス、小ジワ、色素沈着など、皮膚疾患の治療や改善目的で行われています。また、顔面のみならず、四肢や体幹に用いられることもあります。
2)エステティックサロンで行うケミカルピーリング
エステティックサロンでは、肌表面の状態を整える、化粧のりを良くする、肌に透明感を持たせる、肌をしっとりと整える等の目的でケミカルピーリング剤を用いますが、いずれにせよ安全性を確保しなければなりません。
(5)使用するケミカルピーリング剤について
AHAピーリング剤の輸入許可が厚生省から認められたのが1994年ですから、日本におけるケミカルピーリングの歴史はまだ浅く、AHA濃度等に関する規制等は現在のところありません。しかし、高濃度(30%以上)低pH(2以下)では、リスクが激増します。また、先進国であるアメリカにおいては、消費者向け製品の自主規制値として、(あくまでも化粧品業界(CIR)の自主規制ではありますが)既に以下のように規定されています。
★AHA(アルファハイドロキシ酸)に属する酸(グリコール酸、乳酸、リンゴ酸)の溶液を皮膚に塗布する場合、米国のケミカルピーリング剤使用基準は、AHA濃度を化粧品の場合は【10.0%未満、pH3.5以上】、訓練された技術者(エステなど)は【30.0%未満、pH3.0以上】、医師は【30.0%以上、pH3.0以下】。
(米国化粧品業界団体、化粧品成分調査委員会CIR報告)
★TCA(トリクロール酢酸)ピーリング、フェノールピーリング等は医療のみで実施される。
万一ピーリング剤で炎症などを来たした場合、日本人の皮膚は白人に比べて、色素沈着が残りやすいといわれているので、米国のAHA基準をそのまま適用することは危険と考えられます。したがって、作用が緩和であり安全性が高いという観点からも、米国化粧品業界の自主規制値を準用したAHA濃度
【10.0%(w/w)以下、pH3.0以上】が妥当と考えます。
またピーリング剤導入に関しては、安全性を確保した上で最大限の効果を上げるためにも、十分な事前教育の徹底が望まれます。